tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営と国会論議

2016年02月29日 13時38分43秒 | 政治
日本的経営と国会論議
 たまたま今日、国会中継で雇用が話題になっていたので見ていますと、安倍総理が、衰退産業から成長産業へ労働力を移すことの重要性を強調していました。衰退産業に人材がととどまっていたら日本経済は発展しない、だから「雇用調整助成金を減らして、転職を奨励する補助金を増やした」というのです。聞いて私は情けなくなりました。

 政治家が考えたのか、官僚が助言したのか知りませんが、こうした発言が、如何にも素晴らしいことをやっているといった表情で語られるのは、日本的経営の中で現役時代を過ごしてきた我々にとっては、まさに言いようのない無念さを感じさせるものです。

 日本の経済成長を支えた企業の発展は、衰退企業から成長企業に人材が移ったからでなく、ほっておけば衰退する産業から、時代の先端を行く産業に、企業自体が自らを変えていったからでした。そしてそれを支えたのは、その企業に働く多くの人材(人間集団)が協力し、企業を発展させようとした努力の賜物なのです。

 かつて日本経済を支えた繊維産業で言えば、東レは相変わらずレーヨンを作って衰退企業になっているのでしょうか、炭素繊維の世界トップのサプライヤーです、ヒートテック、浄水用の中空繊維をはじめ、いま世界が必要とするものを次々生産する先端企業です。ベンベルグの旭化成は化学の総合メーカーに脱皮し、CO2を原材料にしたプラスチックまで作っていることはこのブログでも書きました。

 ごく最近の例を挙げれば、富士フィルムは写真フィルムで成功しているのでしょうか。薬品から化粧品まで、優れた経営者のもと企業内の優秀な人間集団が技術・ノーハウの蓄積を生かして、全く新しい企業に生まれ変わって世界に名を馳せています。
 これにつきましては、コダックと富士フィルムの比較をこのブログで書かせていただきました。

 政府は、富士フィルムの優秀な従業員が、富士フィルムを去って、チリジリバラバらに、どこかの化学会社に転職するのが日本企業、日本経済の発展にとってより良い行き方と考えているのでしょうか。

 日本企業には、日本の文化伝統に育まれた独特な企業文化があります。かつては企業別組合は欧米に遅れているとか、年功制や職能資格給は職務中心、成果重視より遅れた制度などと言われました、しかし今では、欧米流の職務中心や成果主義は、日本的な長期的経営の視点から見れば、決して効率的でも合理的でもなく、日本流の「人間中心の経営」が、より人間社会に合ったシステムという考え方も、広く理解されるようになりました。

 これもかつてこのブログで書きましたが、 経営学の泰斗P.ドラッカーが、日本には100年以上続く企業がいかの多いかという世界にまれにみる実情に感激し、その経験と分析が、彼の経営学の基盤の一つになっていることは広く知られています。

 今日、国会中継を垣間見て、日本的経営の知識の惨状ともいえる状況があまりに情けなく、こんなことを書かせていただいた次第です。

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